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25日移動平均線はサポートになるか|東証全銘柄3470本で実測した答え

by @kabueng55

25日移動平均線のサポート効果を東証全銘柄3470本で実測したグラフ

「MA25(25日移動平均線)が支持線になる。そこを割ると危ない」——チャート解説でよく耳にする話です。テクニカル分析の入門書にも載っているし、経験を積んだトレーダーも口にする。

でも、「本当に機能しているのか」を実際のデータで確かめた人はどのくらいいるでしょうか。

今回は東証上場の内国株3470銘柄・67万8015件のMA25タッチ事象を使い、「タッチ後に上がりやすいかどうか」をニアミス群との比較で検証しました。先に結論を書くと、タッチ群とニアミス群の翌20営業日プラス率に統計的に意味のある差は確認できませんでした

測り方と結果をすべて公開します。

「MA25はサポートになる」という通説の根拠

25日移動平均線のサポート通説 — なぜ信じられているのか

実際のトレーダーの声を見ると、MA25を「確認ポイントの一つ」として捉えていることが分かります。

押し目買いは、①マイクロンの決算を確認し②為替介入のリスクを計り③25日線などのテクニカルサポートで止まるかを確認する。この3つの確認が終わってから資金を入れるんでも遅くないんだわ。

— ユーエー|高配当×長期投資ラボ (@u___a___53)

個別銘柄の動きを見る場面でも、MA25は頻繁に参照される。

持ち株全部下げたけど、TDKは25日線とボリバンの基準線、京都FGは25日線とサポート効きそうに見えなくもない 頼みまっせー!!

— モリヤマ (@hamatsuyo1984)

これらの声は「多くのトレーダーがMA25を意識している」ことを示しています。では、その「意識」は実際のデータに裏付けられているのでしょうか。

25日移動平均線が特別視される理由はいくつかあります。まず25日という数字は、1ヶ月の取引日数とほぼ一致します。月足の始値と終値を意識するプレイヤーが多いマーケットでは、直近1ヶ月の平均コストに相当するMA25に注目が集まりやすいという考え方です。

もう一つは自己成就的な動きです。「MA25がサポートになる」と信じるトレーダーが多いほど、MA25に近づいた局面で買いが入り、実際に価格が支えられます。テクニカル指標の一部は、「みんなが見ているから機能する」という側面を持っています。

ただ、この理屈は「MA25に特別なエッジがある」とは必ずしも言えません。多くの人が意識しているなら、すでに価格に織り込まれているはずだからです。これが今回の検証で確かめたかったことです。

測り方——再現できるように手順を公開する

対象: 2026年時点で東証に上場している内国株3470銘柄(JPX公式リストの内国株式)

期間: 2015年〜2024年の日足(調整後終値、yfinance経由)

タッチ条件: 当日の安値がMA25の±1%以内に接近したが、終値では深く下抜けていない事象

ニアミス条件: 同じ局面(同期間・同トレンド局面)で、MA25から±1〜2%の距離にある事象(タッチには至っていない)

比較指標: 各事象の起点から翌20営業日後の終値プラス率

プラセボ: 23日線・27日線でも同じ手順を実行し、25日線の結果と比較。もし25日線に特別な意味があるなら、23日・27日とは異なる結果が出るはずです。

この「プラセボ比較」が重要なポイントです。単に「MA25タッチ後の上昇率」だけを出しても、「そもそも株は長期で上がる傾向があるから、どのタイミングでも上がるのでは」という批判に答えられません。同じ条件でのニアミス群と比べることで、「MA25タッチという条件が特別かどうか」だけを取り出しています。

有効銘柄3470本の全事象: 678,015件。うちMA25タッチ群: 89,974件、ニアミス群: 135,931件で比較しました。

結果——タッチ群とニアミス群の差は統計的に検出できなかった

MA25タッチとニアミスのプラス率比較・プラセボ3線比較

実測結果です。

比較タッチ nタッチ プラス率ニアミス nニアミス プラス率Δ
23日線(プラセボ)94,11751.14%138,90850.94%+0.21pt
25日線(本命)89,97450.87%135,93150.99%−0.12pt
27日線(プラセボ)87,28050.85%131,80550.92%−0.07pt

月ブロック・ブートストラップ(5000回)による95%信頼区間:

  • Δ25(タッチ−ニアミス): [−0.76, +0.54]pt ← ゼロをまたいでいる
  • Δ25−Δ23: [−0.77, +0.12]pt ← ゼロを含む(差なし)
  • Δ25−Δ27: [−0.50, +0.39]pt ← ゼロを含む(差なし)

「MA25タッチ後の翌20営業日プラス率が、ニアミス群より高い」という仮説は、今回の検証では支持されませんでした。

プラセボの23日線・27日線と比べても、25日線の結果が特に異なるわけではありませんでした。「25という数字に特別な優位性がある」とは言えない結果です。

追加発見——「終値で下抜けた後」の方が若干プラス率が高かった

ヒゲ支持と終値下抜け後のプラス率比較

今回のデータでもう一つ面白い傾向が見えました。MA25タッチ事象を「ヒゲで支持されたケース(終値がMA25の上)」と「終値でMA25を下抜けたケース」に分けて比較したところ:

n翌20営業日プラス率
ヒゲ支持59,99250.33%
終値下抜け29,98251.95%

差+1.62ポイント、95%CI [+0.51, +2.73] — ゼロを含まない結果でした。

直感に反する傾向に見えるかもしれません。「MA25をヒゲで支持した方が良い」とよく言われますが、実測では終値下抜け後の方がわずかにプラス率が高かった。

ただしいくつかの注意点があります:

  • これは後付けの群分けによる記述統計です。「タッチ vs ニアミス」という事前に設計した比較とは異なり、事後的に群を分けた分析です。過去データへの過適合を排除できていません
  • 「終値下抜け」群には、MA25をわずかに割り込んだ軽微なケースも含まれます。大きく割り込んで下落が続いた銘柄との区別はできていません
  • 因果関係を示すものではなく、あくまでも観測された傾向です

この傾向を「終値下抜けを買え」という戦略として使うには、さらに丁寧な設計と検証が必要です。

統計を噛み砕く——「差がない」と「使えない」は同じではない

ここで整理しておきたいのは、「統計的に意味のある差が出なかった」ことは「MA25が役に立たない」という意味ではないという点です。

今回の検証では「MA25タッチという条件単体でニアミスより翌20営業日のプラス率が有意に高いかどうか」だけを測っています。

測れていないこと:

  • 出来高・トレンドの強度・セクターなどを組み合わせた場合の効果
  • 短期(翌3〜5日)の効果(今回は20営業日後のみ)
  • エントリーと出口を組み合わせた損益への影響
  • 個別銘柄の特性を考慮した選択をした場合

「MA25に近づいたら自動的に買う」という機械的なルールだけでは優位性が見えなかった——それが今回の結論です。実際のトレードでは「MA25タッチ」を一つの観察ポイントとして使いながら、出来高や値動きのコンテキストを加味して判断する使い方が多いはずです。その複合的な判断の有効性は、今回の検証では測れていません。

MA25と組み合わせると語られる他の条件

MA25タッチ単体でのエッジが確認できなかった今回の結果を受けて、「では実際のチャート分析の現場ではどう使われているか」を整理しておきます。

出来高との組み合わせ

MA25タッチの局面で出来高が急増している場合、「重要な節目で強い買いが入った」という解釈が成立しやすくなります。逆に出来高が薄ければ、MA25タッチが「意識されていない」状態かもしれません。

今回の検証は出来高の条件を設けていません。「MA25タッチ×出来高増加」という条件を絞った場合の検証は今回の測定対象外です。

トレンドとの整合性

上昇トレンド継続中のMA25タッチと、下落トレンド中のMA25タッチでは意味が異なります。上昇トレンド中の押し目では「買い意欲がある状態でのMA25接近」であり、下落トレンド中の一時的な反発局面でのタッチとは性質が違います。

今回の検証では「局面マッチ」として対称±1%帯を設けていますが、大きなトレンド方向の区別はしていません。

複数のMAラインの重なり

MA25だけでなく、MA50・MA75・MA200といった複数の移動平均線が同じ水準に集まる「MAの重なり」が生じる局面では、意識される水準としての重みが増します。

今回の検証はMA25の単一ラインのみを対象としています。


これらの「組み合わせ条件」が実際のエッジにつながるかどうかは、それぞれ別途検証が必要です。「組み合わせれば有効になるはず」という直感は自然ですが、その直感も実データで確かめる価値があります。

「支持線」と「押し目」の違い

MA25がよく語られる文脈には「サポートライン(支持線)」と「押し目買いポイント」の2つがあります。この2つは微妙に意味が異なります。

サポートライン(支持線)としてのMA25: 価格がその水準で下げ止まり、反発しやすいという主張。今回の検証はこの側面——「タッチ後に上がりやすいか」——を測ったものです。

押し目買いポイントとしてのMA25: 上昇トレンドが継続している前提で、一時的な調整を「最もコストが有利な買いの機会」として使うという発想。この場合の目的は「支持される確率」より「トレンド方向のリターンを取ること」です。

今回の検証結果は「サポートとしての機能」には統計的裏付けが見えなかったことを示していますが、「上昇トレンド中のコスト最適化ポイント」という使い方を直接否定するものではありません。

押し目買いの考え方については押し目買いの戦略、ゴールデンクロスなど他の移動平均線シグナルの信頼性についてはゴールデンクロスの信頼性と出来高判断も参照してください。

検証結果とトレード記録をつなぐ

今回の検証で分かったことをまとめると:

  1. MA25タッチ単体の優位性は統計的に確認できなかった(Δ=−0.12pt、CI[−0.76, +0.54])
  2. プラセボの23日・27日線と比べても、25日線が特別ではなかった
  3. 終値下抜け後の方がわずかに高い傾向はあったが、後付けの記述統計で因果は不明

この「市場全体の統計」が示す結果と、「自分自身のMA25トレードの成績」は別物です。

なぜなら、個人のトレードはMA25以外の判断も加わっているからです。「MA25タッチ+出来高確認+上昇トレンド継続」という複合条件で入っているなら、MA25単独の検証結果とは比べられません。

自分のMA25トレードが機能しているかどうかを確かめるには、自分のトレードを記録して集計するしかありません。「MA25タッチを根拠にしたエントリー」というタグをつけて記録し、10件・20件と溜まったところで勝率や損益を確認する。

この作業に使っているのがhabitreです。

「自分のMA25トレード」は機能しているか

少し個人的な話をします。私自身、チャートを見始めた頃からMA25を「意識すべき線」として捉えていました。「MA25にタッチしたら押し目買い」というルールを持ち、何度も試みました。結果を振り返ると、機能した場面もありましたが、MA25タッチ直後にそのまま割り込んで損切りになった場面も同じくらいありました。そのときの実感は「MA25があるから安心」というより「MA25があるからポジションを持ったが、それは根拠として弱かった」でした。

統計が「差がない」と出たのは、私の体験とも符合しています。

こうした統計の結果を見たとき、一つ問いが浮かびます。

「自分がMA25を根拠に入ったトレードは、実際にどのくらいの確率で機能していたか?」

市場全体では統計的差が見えなくても、特定の条件(銘柄・相場環境・組み合わせる指標)を絞った場合に偏りが出ることはあります。逆に、「MA25が機能する」と思っていたが実は相場環境のせいだったこともあり得ます。

それを確かめるには、自分のトレードを記録して集計するしかありません

私が使っているのはhabitreです。「MA25タッチを根拠にしたエントリー」というタグをつけて記録し続けることで、自分のMA25トレードの勝率・損益をまとめて確認できます。統計の結論は「全銘柄の平均」ですが、あなた自身のMA25活用法が機能しているかどうかは、自分のデータで確かめるしかありません。


→ 自分のMA25トレードを記録して分析する(habitre)


関連記事

移動平均線の使い方を別の角度から掘り下げた記事も参考にしてください。

// faq

よくある質問

Q. 25日移動平均線はサポートとして機能しますか?

A. 実測では、MA25タッチ後の翌20営業日プラス率はタッチ群50.87%・ニアミス群50.99%で差はΔ=−0.12ポイントでした。月ブロック・ブートストラップの95%信頼区間は[−0.76, +0.54]でゼロをまたいでいます。「統計的に意味のある差がある」とは言えませんでした。

Q. 終値でMA25を割ったらどうなりますか?

A. 実測では、ヒゲで支持されたケース(プラス率50.33%)より終値で下抜けたケース(51.95%)の方が翌20営業日プラス率が高く、差+1.62ポイントで95%信頼区間[+0.51, +2.73]はゼロを含みませんでした。ただし後付けの群分けによる記述統計であり、因果関係を示すものではありません。

Q. この検証はどうやって行いましたか?

A. 東証上場の内国株3470銘柄について2015〜2024年の日足で、MA25に対して±1%以内に接近した事象を「タッチ」、同じ局面で±1〜2%の位置にある事象を「ニアミス」として抽出し、翌20営業日のプラス率を比較しました。月ブロック・ブートストラップ5000回で信頼区間を算出しています。

Q. なぜプラセボとして23日・27日線と比べるのですか?

A. もし25日線に特別な意味があるなら、23日線や27日線とは違う結果が出るはずです。実測ではΔ23=+0.21pt、Δ25=−0.12pt、Δ27=−0.07ptで、25日線の差が特に大きいわけではありませんでした。「25という数字そのものに優位性がある」という証拠は見つかりませんでした。

Q. MA25を使った押し目買いは有効ではないのですか?

A. 今回の検証は「MA25タッチ後の翌20営業日プラス率に差があるか」を測ったものです。個別銘柄のコンテキスト(出来高・トレンド強度・セクター)を加味した判断や、エントリータイミングの精度による差は測定していません。「MA25を使ってはいけない」のではなく、「MA25タッチという条件単体では統計的優位性が見えなかった」というのが正確な表現です。