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「窓は必ず埋まる」は本当か?東証1,528銘柄10年で検証した埋め率
by @kabueng55
私自身、株を始めたころに「窓が開いたら必ず埋まる」という言葉を聞いてから、窓が気になって仕方なくなった時期がありました。
前日終値から大きくギャップを開けて始まった翌朝、「いつか戻ってくるはずだ」と画面を眺めていた記憶があります。ところが、実際には何週間待っても埋まらない窓も珍しくなく、「必ず」という言葉の重みが少しずつ薄れていきました。
この記事では、その「窓は必ず埋まる」という格言を、東証プライム1,528銘柄×10年分のデータで実際に検証した結果をお伝えします。
この記事でわかること
- 「窓は必ず埋まる」格言の実際の埋め率(全体・方向別・サイズ別)
- 上窓と下窓で埋まりやすさに差があるかどうか
- 大きな窓(5%超)は小さな窓より埋まりにくいのか
- 格言が成立しにくい条件の傾向
「窓は必ず埋まる」格言の背景

まず格言が生まれた背景を整理しておきます。
「窓(ギャップ)」とは、前日の終値と翌日の始値の間に生じる価格の空白のことです。日本株では決算発表・大きなニュース・市況の急変などをきっかけに頻繁に発生します。
「必ず埋まる」という考え方の根拠とされるのは、大きく2つです。
1つは「平均回帰」の考え方です。価格は行き過ぎると戻ってくる傾向があるため、急激なギャップも時間とともに解消されるという論理です。
もう1つは経験則です。実際に多くのトレーダーが「窓が開いたら待てば戻ってきた」という経験を積み重ねてきました。特に小さめのギャップでは埋め率が高いため、「また埋まった」という印象が強化されやすいのです。
実際、Xでも窓埋めを意識したトレーダーの声は日常的に見られます。
これキオクシア66000の窓埋めに行くな 追証連鎖今週じゃなくて来週がピークになりそう
— ひびっち (@hibitti)(2026年6月10日)
5月初旬の窓を埋めに行って欲しい
— ともさん、投資ベースへの道! (@TomoKabuaf)(2026年6月11日・前場の相場観より一部抜粋)
個別銘柄の急変でも指数の調整でも、「窓を埋めるかどうか」が値動きの目安として語られています。それだけ広く浸透した格言だからこそ、「必ず」が本当かどうかをデータで確かめる価値があります。
ただし、どちらも「必ず」を保証する根拠にはなりません。平均回帰は傾向であって法則ではなく、経験則は確証バイアスの影響を受けやすいものです。
窓の4種類 — そもそも同じ「窓」ではない
テクニカル分析の古典では、窓は発生する場面によって4種類に分類されます。「窓は必ず埋まる」を考える前に、この分類を知っておくと「埋まりやすい窓」と「埋まりにくい窓」の区別がつきやすくなります。
① 普通の窓(コモンギャップ)
保ち合い(レンジ)の中で、特に大きな材料がないのに開く小さな窓です。出来高の少ない銘柄や閑散とした相場で発生しやすく、4種類の中では最も埋まりやすいとされます。レンジの中で価格が行き来するため、数日のうちに窓の水準へ戻ってくるケースが多いのです。
② 突破窓(ブレイクアウェイギャップ)
長い保ち合いや重要な抵抗線・支持線を、窓を開けて一気に突破するときの窓です。決算サプライズや大きなニュースを伴うことが多く、新しいトレンドの始点になりやすい窓です。古典的な解釈では「突破窓は埋まりにくい」とされます。トレンドの起点だからこそ、価格がもう戻ってこないことが多いためです。
今回の検証で「large上窓(5%超のギャップアップ)の90日埋め率が59.7%にとどまった」という結果は、この古典的な解釈と整合的です。大きな上窓の多くは決算や材料を伴う突破窓であり、株価水準そのものが切り上がってしまうため、元の価格に戻りにくいのです。
③ 継続窓(ランナウェイギャップ)
すでに進行中のトレンドの途中で開く窓です。トレンドの勢いが強いことを示すサインとされ、「測定窓(メジャリングギャップ)」とも呼ばれます。トレンドの中間地点で発生しやすいという経験則があるためです。これも、トレンドが続いている間は埋まりにくい窓です。
④ 消耗窓(エグゾースチョンギャップ)
トレンドの最終局面で、最後の買い(または売り)が殺到して開く窓です。発生直後は勢いがあるように見えますが、エネルギーを使い果たした状態のため、比較的早く埋まりやすいとされます。消耗窓が埋まることはトレンド転換のサインの一つと解釈されることもあります。
分類の実務上の難しさ
注意したいのは、**この4分類は「後になってみないと確定しない」**ことです。窓が開いた瞬間に「これは突破窓だ」と判定するのは難しく、トレンドが続いたから振り返って突破窓だった、と分かるケースがほとんどです。
それでも「保ち合い中の小さな窓か、材料を伴う大きな窓か」程度の区別はその場でできます。今回の検証で出た「窓のサイズが大きいほど埋まりにくい」という傾向は、この古典分類を数字で裏付けるものと言えます。
検証方法と定義

対象データ
- 対象銘柄: 東証プライム全銘柄1,528銘柄(JPX公式CSVから取得・最低500営業日のデータがある銘柄)
- 期間: 2015年1月〜2025年1月(10年)
- データ: yfinance経由で取得した日足の始値・高値・安値・終値
なお、yfinanceは公開株価データを個人研究目的で利用できるツールです。本記事の統計は非公開で銘柄名も公開していません(個別銘柄の推奨を意図するものではないため)。
「窓」の定義
本記事では「前日終値と当日始値の差が前日終値比で±2%以上」を窓として定義しました。
ギャップ率 = (当日始値 - 前日終値) / 前日終値
|ギャップ率| ≥ 0.02 → 窓あり
0〜2%未満のわずかな価格差は日常的に発生するため、意味のあるギャップに絞るために2%を閾値としました。
「埋まった」の定義
- 上窓(ギャップアップ): 窓が開いた後、指定日数以内の安値が前日終値以下に達した日がある → 埋まった
- 下窓(ギャップダウン): 窓が開いた後、指定日数以内の高値が前日終値以上に達した日がある → 埋まった
埋め判定は「30日・60日・90日・180日以内」の4つの期間で行いました。
この検証の限界(先に書いておきます)
- サンプルは限定的: 1,528銘柄は東証プライム全銘柄をカバーしており、より網羅的な検証です
- 2015〜2025年という特定の時期: この10年は全体的に緩やかな上昇相場でした。下落相場が続く局面では、特に上窓の埋め率が低下する可能性があります
- 取引コストを考慮していない: 窓が埋まるまで待つ戦略の損益計算には、機会費用や時間コストが含まれていません
- 過去の傾向が将来を保証しない: 以下の数字はあくまで過去の観察です
検証結果
1. 全体の埋め率

全1,528銘柄・10年で検出された窓の数は 278,833件(上窓146,618件・下窓132,215件)。
| 期間 | 埋め率 |
|---|---|
| 30日以内 | 77.8% |
| 60日以内 | 83.5% |
| 90日以内 | 86.5% |
| 180日以内 | 89.5% |
90日(約4ヶ月)以内に86.5%が埋まりました。一方、180日経っても埋まらなかった割合は約10.5%存在します。
「必ず埋まる」という表現に照らすと、90日基準で86%、半年基準でも89%であり、「高確率で埋まる傾向がある」とは言えますが、「必ず」には届きません。
2. 上窓と下窓で差があるか
「窓」をギャップアップ(上窓)とギャップダウン(下窓)に分けると、明確な差が見えました。
| 方向 | 30日以内 | 60日以内 | 90日以内 | 180日以内 |
|---|---|---|---|---|
| 上窓 | 74.0% | 80.1% | 83.7% | 86.6% |
| 下窓 | 80.5% | 87.0% | 89.7% | 92.7% |
下窓の方が一貫して埋まりやすい結果でした。90日基準で上窓83.7%・下窓89.7%と、約6.0ポイントの差があります。
この差には直感的な説明があります。下窓(ギャップダウン)は株価が急落した状態ですが、その後の値上がり(買い戻し・逆張り)で埋まりやすい傾向があります。一方、上窓(ギャップアップ)は急上昇後の状態で、上昇に乗り遅れた買い圧力が弱いため、下方向に戻りにくい局面も多いのです。
3. 窓のサイズで差があるか
次に、窓のサイズ(ギャップの大きさ)で層別しました。
- small: ギャップ率2〜3%
- medium: ギャップ率3〜5%
- large: ギャップ率5%超
90日以内の埋め率を方向×サイズで整理すると:
| サイズ | 上窓(90日) | 下窓(90日) |
|---|---|---|
| small(2〜3%) | 88.1% | 92.6% |
| medium(3〜5%) | 81.4% | 88.1% |
| large(5%超) | 59.7% | 76.7% |
最も埋まりにくいのは「大きな上窓(large上窓)」で59.7%。5%以上のギャップアップは90日たっても埋まらないケースが約4割ありました。
この数字は「窓は必ず埋まる」という格言がもっとも崩れるのが、大きな上窓というケースを示しています。決算発表での急騰・M&Aニュース・政策変更といった強いポジティブ材料でギャップアップした銘柄は、その材料分だけ株価水準が切り上がり、以前の価格に戻らないことが多いと考えられます。
数字の背景にある解釈

なぜ下窓の方が埋まりやすいのか
上で触れましたが、少し補足します。
株価が急落(下窓)すると、直後から以下の動きが起きやすい傾向があります。
- 急落前に保有していた投資家の「戻ったら売ろう」という待ちの売り圧力は、急落後には薄れる
- 割安感が生じ、新規買いや買い増しが入りやすくなる
- 信用買い残の整理が一巡すると、戻りが加速することがある
結果として、下窓は埋まる方向(上昇)への圧力が働きやすいのです。
一方、上窓(急騰後)は高値圏での保有者が増え、「戻ったら売ろう」という上値の重さに加えて、ショートセラーの利食いも起きにくい局面が続くことがあります。これが上窓の埋め率を引き下げる要因の一つと考えられます。
large上窓の59.7%をどう読むか
「5%超の上窓が90日で59.7%しか埋まらない」という数字を、逆の視点から見てみます。
つまり、5%以上のギャップアップが起きた銘柄の約4割は、90日経っても元の価格に戻らなかった、ということです。
これは「急騰に乗ったまま保有している」株主には有利な状況ですが、「窓は埋まるはず」と見込んで空売りや下方向のポジションを取った場合は厳しい状況です。「大きな上窓は必ず埋まる」という前提でトレードするのは、データ上はかなりリスクが高い戦略だと言えます。
「埋まる・埋まらない」以前に性質が違う窓
格言を当てはめる前に、そもそも需給とは関係なく開く窓 があることも知っておく必要があります。
配当・権利落ちの窓
配当や株主優待の権利確定日の翌営業日(権利落ち日)には、理論上、配当分だけ株価が下がって始まります。高配当銘柄では2%を超える下窓になることもありますが、これは悪材料による急落ではなく価値の移転による機械的な調整です。「下窓だから埋まりやすいはず」という期待を、権利落ちの窓にそのまま当てはめるのは筋が違います。埋まるかどうかは、その後の業績と需給次第です。
指数・先物に引っ張られた窓
日経平均やTOPIXが海外市場の急変を受けて大きくギャップして始まる日は、個別銘柄も一斉に窓を開けます。この場合、その銘柄固有の材料ではなく市場全体の地合いが原因です。地合い由来の窓は、地合いが戻れば銘柄側の事情と関係なく埋まることが多く、逆に地合いの悪化が続けば良い銘柄でも埋まりません。「この銘柄の窓」を見ているようで、実際には「市場全体の窓」を見ている、というケースです。
出来高の少ない銘柄の窓
売買が閑散な銘柄では、わずかな注文の偏りで2%程度の窓は簡単に開きます。こうした窓は統計的なノイズに近く、格言の対象として論じる意味は薄いと考えています。今回の検証では東証プライムの主要銘柄に絞ることで、この影響をある程度抑えています。
埋まらなかった窓は「支持線・抵抗線」になるのか
窓に関するもう一つの古典的な解釈に、「窓は支持帯・抵抗帯として機能する」というものがあります。
- 上窓(ギャップアップ)の価格帯は、その後の下落局面で支持帯として意識されやすい
- 下窓(ギャップダウン)の価格帯は、その後の反発局面で抵抗帯として意識されやすい
理屈としては、窓の価格帯は「取引が成立しなかった空白地帯」であり、そこに戻ってきたときに売買の攻防が起きやすい、という解釈です。チャートを見るトレーダーが多いほど、窓の縁(前日終値と当日始値)が意識され、注文が集まりやすくなる側面もあります。
また、窓を開けた直後に反対方向へ再び窓を開ける「アイランドリバーサル(離れ小島)」というパターンもあります。高値圏で上窓→数日横ばい→下窓と動くと、チャート上に孤立した「島」が残ります。古典的にはトレンド転換のサインとされる形です。
これらはいずれも経験則であり、今回の検証の対象外です。ただ、「窓は埋まるかどうか」という一点だけでなく、「窓の価格帯がその後どう機能するか」という視点を持つと、窓をより多面的に観察できるようになります。
相場環境で大きく変わる埋め率
サイズ・方向以外にもう一つ、見落としがちな要因があります。それが「その年の相場環境」です。
上窓large(5%超)の年別未埋め率を集計すると、驚くほど大きな差が出ました。
| 年 | 未埋め率 | 相場の特徴 |
|---|---|---|
| 2024 | 57.2% | 日経最高値更新・外国人買い加速 |
| 2016 | 51.0% | 日銀マイナス金利→急騰・Brexit後リバウンド |
| 2023 | 50.6% | 外国人買い再燃・日経急騰 |
| 2021 | 22.0% | コロナ後低迷・横ばい |
| 2015 | 22.3% | アベノミクス天井・チャイナショック |
| 2018 | 15.1% | 年始高値→12月急落(-20%) |
強い上昇相場の年(2016・2023・2024)は平均52%が未埋め。下落・調整相場の年(2015・2018・2021)は平均20%が未埋め。3倍近い差が出ています。
これは直感的に理解できます。相場全体が強い上昇基調にあるとき、上窓を開けた銘柄はそのまま上昇を続けることが多く、窓を埋める水準まで価格が戻らないケースが増えます。逆に下落・調整局面では、上窓を開けた後に相場全体が下落して窓が埋まりやすくなります。
「窓は必ず埋まる」格言が機能するかどうかは、方向・サイズだけでなくその年が強い相場かどうかにも大きく左右されるのです。
2024年のように日経が最高値を更新し続けていた相場では、大きな上窓の約6割が90日で埋まりませんでした。格言を使うなら「相場環境が下落・調整局面かどうか」を確認してからが、実データの示す結論です。
窓にまつわる代表的な3つの考え方をデータと照合する
「窓は必ず埋まる」格言の周辺には、窓を使った代表的な考え方がいくつかあります。特定の手法を推奨する意図はありませんが、それぞれの考え方が今回のデータとどう整合するか・しないかを整理しておきます。
考え方①: 窓埋めを見込んだ逆張り
「窓が開いたら、埋まる方向に戻ることを見込んでポジションを取る」という発想です。
データとの照合: 全体の90日埋め率86.5%という数字だけ見ると有望に思えますが、「いつ埋まるか」が分からない点が最大の問題です。30日以内では77.8%に下がり、埋まるまでの期間中の含み損・機会費用は数字に表れません。また、large上窓では埋め率59.7%まで低下するため、「大きく開いた窓ほど戻り幅も大きい」と考えて大きな窓を狙うほど、データ上は分が悪くなる構造です。
考え方②: 窓開け方向への順張り
逆に、「大きな窓はトレンドの始まりと見て、窓の方向についていく」という発想です。
データとの照合: large上窓の約4割が90日埋まらなかったという結果は、「大きな上窓はそのまま上昇が続くケースが相応にある」ことを意味し、この考え方と部分的に整合します。ただし裏を返せば約6割は90日以内に元の水準まで戻ったわけで、窓開け直後の高値で買うことのリスクも同時に示しています。方向はともかく、エントリーのタイミングと撤退基準を別途設計する必要があります。
考え方③: 窓を支持・抵抗の目安にする
ポジションを取る根拠ではなく、「窓の価格帯を支持帯・抵抗帯の目安として使う」という使い方です。
データとの照合: 今回の検証はこの解釈を直接検証していませんが、エントリーやロスカットの位置を決める際の参照点として窓を使うのは、「埋まるか埋まらないか」を当てにいくよりも検証データとの矛盾が少ない使い方です。窓が埋まった・埋まらないという結果そのものに賭けるのではなく、価格の節目として観察する立場だからです。
共通する注意点
3つの考え方のいずれにも共通するのは、「窓」単独では判断材料として不十分だということです。今回のデータが示した通り、同じ窓でも方向・サイズ・相場環境で埋め率は59.7%から92.6%まで32.9ポイントも変わります。窓を見るなら、最低でも「上か下か」「何%開いたか」「いまの地合いはどうか」の3点をセットで確認する必要があります。
チャート上で窓を確認する手順
格言の検証結果を自分の銘柄に当てはめる前に、そもそも「窓をどうやって確認するか」を整理しておきます。普段使っている証券会社のチャートツールで、次の手順で確認できます。
- 日足チャートでローソク足表示にする — ラインチャート(終値の折れ線)では窓は見えません。前日の実体・ヒゲと当日の始値の間に空白があるかで判断します
- 前日終値と当日始値の差を%で測る — 多くのチャートツールでは、ローソク足にカーソルを当てると四本値が表示されます。(当日始値 − 前日終値) ÷ 前日終値で、ギャップ率を計算できます
- 窓の上端・下端に水平線を引く — 上窓なら「前日終値(下端)」と「当日始値(上端)」の2本。この帯が「窓の価格帯」で、埋め判定の基準になります
- 埋まったかどうかは下端への到達で見る — 上窓なら、その後の安値が前日終値(下端)以下に達した時点で「埋まった」と判定します
注意したいのは、チャートの表示設定によって窓の見え方が変わることです。株式分割の調整前後で過去の窓の位置がずれたり、出来高の少ない銘柄では気配値の関係で実際より大きな窓に見えたりします。また、週足や月足では日足の窓は基本的に表示されないため、窓の観察は日足が基本です。
慣れてくると、チャートを開いた瞬間に「埋まっていない窓がどこに残っているか」が目に入るようになります。残っている窓の位置を把握しておくこと自体が、その銘柄の節目を把握することにつながります。
自分のトレードに活かすには
トレードの過程でこういう格言を聞いたとき、「本当にそうなのか?」と疑う習慣はとても大切だと感じています。
私は以前、ある銘柄が決算発表で5%以上のギャップアップをした翌日、「いつか埋まるだろう」と漠然と思って様子を見ていたことがありました。結局その窓は数ヶ月たっても埋まらず、そのまま株価は上昇を続けていきました。あのとき、「大きな上窓は埋まりにくい」というデータがあれば、少し判断が変わっていたかもしれません。
格言は「傾向の要約」として便利なものですが、条件が違えば成立しないケースも多い。これはこの窓の話だけでなく、テクニカル分析全般に言えることだと思います。
自分の窓トレードを記録して確認する
「自分が取引する銘柄での窓の埋め率」は、市場平均と異なる可能性があります。
セクターによっても、時期によっても、銘柄の特性によっても埋め率は変わります。「格言では○○%と言われているが、自分がよく取引する銘柄ではどうか?」を自分で記録・確認することが、格言をうまく使いこなす第一歩です。
記録するときのポイントは、窓が関わったトレードについて次の3点をセットで残すことです。
- 窓の条件 — 上窓か下窓か・ギャップ率は何%だったか・きっかけは何か(決算・地合い・権利落ちなど)
- 自分の判断 — 「埋まるはず」と考えたのか、「トレンドの始まり」と見たのか。判断の根拠を一言で
- 結果と期間 — 窓は何日で埋まったか(または埋まらなかったか)、自分の損益はどうだったか
数件たまった時点で見返すと、「自分は上窓を『埋まるはず』と考えて逆張りする癖があるが、ほとんど機能していない」といった、自分固有の傾向が浮かび上がってきます。市場全体の統計と自分の実績、その両方を持って初めて、格言を自分なりに修正して使えるようになります。
habitre では、取引の記録にパターンタグをつけて振り返ることができます。窓が関係したトレードに「ギャップアップ」「ギャップダウン」などのタグをつけておくと、自分の窓トレードの傾向が見えてきます。
まとめ
東証プライム1,528銘柄×10年(278,833件の窓)の検証結果をまとめます。
- 全体: 90日以内の埋め率は86.5%(「必ず」ではないが高確率)
- 方向差: 下窓(89.7%) > 上窓(83.7%)— 下窓の方が埋まりやすい
- サイズ差: small(88〜93%) > medium(81〜88%) > large(60〜77%) — 大きいほど埋まりにくい
- 最も注意: 大きい上窓(5%超)は90日埋め率59.7% — 格言が最も崩れるケース
- 相場環境: 強い上昇相場の年は上窓largeの未埋め率が5割超、下落・調整の年は2割前後と約3倍の差
- 古典分類との整合: 突破窓(材料を伴う大きな窓)は埋まりにくいという古典的解釈をデータが裏付けた
- 例外に注意: 権利落ち・指数連動・閑散銘柄の窓は需給由来の窓とは性質が異なり、格言の対象として扱いにくい
「窓は必ず埋まる」は高確率で観察される傾向であって、絶対の法則ではありません。特に大きな上窓は約4割が90日以内に埋まらなかった、というのが10年間のデータから見えた実態です。
免責事項: 本記事で示した数字は東証プライム1,528銘柄×10年間の過去データの観察であり、特定の売買手法の推奨・投資助言ではありません。実際の投資判断はご自身の責任でお願いします。
// faq
よくある質問
Q. 「窓は必ず埋まる」という格言は本当ですか?
A. 「必ず」は過去データでは支持されません。東証プライム1,528銘柄×10年の検証では90日以内に埋まった割合は86.5%でした。残り約13.5%は90日経っても埋まりませんでした。ただし条件(上窓・下窓・窓のサイズ)によって埋め率は大きく変わります。
Q. 上窓と下窓ではどちらが埋まりやすいですか?
A. 下窓の方が埋まりやすい傾向があります。90日以内の埋め率は上窓83.7%・下窓89.7%で、下窓の方が約6.0ポイント高い結果でした(東証プライム1,528銘柄×10年の観察)。
Q. 大きな窓(5%超)はどれくらい埋まりますか?
A. 上窓の5%超(large)は90日以内の埋め率が59.7%にとどまりました。下窓large(76.7%)や小さな窓(small:上窓88.1%・下窓92.6%)と比べると顕著に低い傾向が見られます。
Q. 窓が開いたらすぐに逆張りして良いですか?
A. 本記事は過去データの観察であり、特定の売買手法を推奨するものではありません。埋め率の高低は過去の傾向を示すものですが、将来も同様になることを保証するものではなく、実際の売買判断はご自身の責任で行ってください。